Question
弊社では無期雇用の定年を60歳と定めていますが、有期雇用契約社員が無期雇用へ転換した場合も、雇用期間の上限は60歳となるのでしょうか。また、定年を雇用期間の上限とする場合、無期転換後の雇用契約に定年年齢を明記し、労働者の同意を得ていれば問題ないでしょうか。
Answer
有期雇用契約社員の契約期間の上限は任意設定できるものの、通算5年を超えて更新された場合、労働者の申し込みにより、本人が権利を行使すると期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換します(「無期転換ルール」)。高度専門職や継続雇用の高齢者等は、特例によりルール適用から除外されます。
転換後の雇用期間の上限については、就業規則等で合理的かつ周知された定年制度がある場合、定年年齢とすることが可能です。雇用契約書に定年年齢を明記の上、労働者の同意を得れば、法的にも問題ありません。
<無期雇用と有期雇用における、雇用期間の法令上の違い>
・無期雇用
定年を規程や個別雇用契約に定めていない場合、原則本人が退職を希望するまで雇用する必要があります。定年年齢は、60歳以上であれば、会社が自由に定められます。
さらに、高年齢者雇用安定法に基づき、会社は希望者全員を65歳まで雇用する義務があります。
・有期雇用
契約期間の上限を任意設定することが可能です。
ただし、契約期間が通算5年を超えて更新された場合は、無期転換申込権が発生し、無期労働契約に移行します。通算契約期間が5年を超えた時点以降の有期雇用期間中であれば、いつでも無期転換を申し込むことができます。使用者はこの申込を拒否できません。
しかし、以下の対象者は特例により無期転換ルールの適用が除外されます。無期転換申込権が発生しないため、対象者の雇用期間の上限は定年ではなく契約期間に基づきます。
①および②の特例適用には、事業主が所定の計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。
【特例の対象者】
① 高度専門職:年収1075万円以上で、専門的知識や技術を有し、5年超のプロジェクトに従事する者
② 継続雇用の高齢者:定年後に有期労働契約で再雇用される高齢者
※他社を定年退職した場合や、定年前から有期雇用労働者である場合、特例の対象とならない
③ 大学や研究機関の研究者・教員等
<今回のケース>
有期雇用契約社員は無期転換後「期間の定めのない労働契約」となるものの、会社が就業規則等で合理的かつ周知された定年制度がある場合、定年を適用することができます。無期転換後の雇用契約書に定年年齢を明記し、労働者の同意を得ていれば、法的にも問題ありません。
また定年後は正社員同様、65歳までの雇用確保が義務付けられるため再雇用の対象となります。特例により無期転換権が発生しない場合であっても、65歳を超えて雇用すると以降雇止めが難しくなることが想定される(現在70歳までの雇用確保が「努力義務」とされている)ため、雇用上限は原則65歳としておくことを推奨します。
<まとめ>
有期雇用労働者の無期転換後の雇用期間の上限については、労働者とのトラブル防止の観点からも、雇用契約書や就業規則の整備が重要です。
<参考>
厚生労働省「無期転換ルールハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~」
厚生労働省「高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について」
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※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。