人事・労務Q&A

業務命令の研修を拒否した社員を懲戒処分にできるか

Question

当社では新入社員へ外部機関の研修を実施していますが、体調不良を理由に受講を拒否する社員がいます。再三の業務命令にもかかわらず、拒否しつづけています。この社員を懲戒処分にすることは可能ですか。

Answer

医師による診断書の提出を求め、記載内容に即した合理的配慮を提示したにもかかわらず、受講を拒否しつづける場合は懲戒処分し得ます。ただし、研修が業務命令としての位置づけであること、企業が行った合理的配慮、本人との面談の記録等を残し、且つ就業規則や過去の事例に照らして相応の処分であることが客観的に認められるよう実施する必要があります。

<懲戒処分とは>

懲戒処分とは、社員が就業規則や業務命令に違反した場合に、企業秩序を維持するため会社が科す制裁のことです。懲戒処分は就業規則に根拠があり、かつ客観的に合理的で社会通念上相当である場合に限り認められ、戒告、譴責、減給、出勤停止、懲戒解雇等の種類があります。

 

<今回のケースへの対応>

体調不良を理由に研修を拒否したことだけを理由にいきなり懲戒処分にすることは危険です。法令上、懲戒は段階や証拠、手続きが重要で、順番を誤ると懲戒無効となる可能性があります。今回のケースの場合には一般的に次のように進めます。

 

(1)       事実確認

まずは社員の受講拒否の理由が正当かどうかを確認します。今回のケースでは体調不良を理由としているため、医師による診断書の提出を求めます。

会社として合理的配慮を行うのに、診断書の内容が不十分である(治療の目安期間や業務上の配慮事項の記載がない等)場合、診断書の再提出や産業医面談の実施、会社指定の医療機関の受診を求めます。

(2)       本人との面談

本当に参加できないのかどうか、体調不良の具体的な内容、どの条件なら受講可能か等を確認します。議事録を作成しておきましょう。

(3)       会社として配慮を提示

診断書や面談の内容をもとに、研修日変更、オンライン参加、短時間参加等必要な合理的配慮を社員に書面で提示します。

(4)       口頭注意・書面注意

業務命令として再度受講を指示します。正当な理由なく、引き続き受講を拒否する場合には、口頭注意・書面注意を行います。

(5)       懲戒処分の検討

引き続き改善しない場合は、懲戒を検討します。就業規則の懲戒規定から該当する事由を確認し、過去の事例をもとに処分内容を検討します。就業規則の記載内容にもよりますが、今回該当しやすい事由としては業務命令違反、職務怠慢、就業規則違反等が考えられます。処分内容としては研修拒否レベル且つ初めての懲戒であれば戒告や譴責が無難です。

(6)       懲戒通知書の交付

会社によっては懲戒委員会や役員決済等を通して、処分が決定したら事実、就業規則条文、処分内容、処分日等を記載して社員に書面で通知します。

(7)       社内開示

名誉棄損にならないよう客観的事実のみ公表し、社員の氏名は開示しません。

<まとめ>

体調不良を理由に研修の受講を拒否する社員に対しては、まず診断書や面談を通じて事実確認を行い、会社として合理的な配慮を提示する必要があります。口頭注意や書面注意の段階を踏んだ上でそれでも改善が見られない場合に懲戒へ移行します。事実関係、診断書、面談記録、合理的配慮の内容等を証拠として書面に残し、就業規則や過去事例に照らして客観的根拠に基づく処分内容とすることが重要です。
  

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※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。